ドローイング作品を展示する機会が3月から4月にかけて続いた。横浜のギャラリーGoozenでの2人展(3/8〜3/30)、美学校「生涯ドローイングセミナー」2022年度修了展(4/13〜4/22)と、準備やら何やらで映画館に行くどころか自宅で映画を観る余裕もない日々。先月『映画はねむい』の3回目をアップしてから3本か4本しか観れていない。
4月公開の映画がなかなか充実していてどれも面白そう。中でも『ガールピクチャー』『ダーク・グラス』『ノック終末の訪問者』『Air エア』『ホエール』『聖地には蜘蛛が巣を張る』『ベネシアフレニア』『私、オルガ・ヘプナロヴァー』『セールスガールの考現学』といったところが気になる。気になるものの今の自分の映画館へ行くペースを考えると、まあ頑張っても3〜4本観れたらよい方。結局展示があったりしたので映画館へ行く頻度はさらに落ちて2本がやっと。まあ行ってもねむってしまうのだけども。
新作以外でも昨年に引き続きシャンタル・アケルマンの特集上映や昨年亡くなったゴダールの特集上映がやっていたり始まったりで、都内はどちらもヒューマントラストシネマ渋谷。多くのシネフィルがねむりに駆けつけるのだろう。ヒュートラ渋谷がカプセルホテルになる4月。
「上質な眠り」云々を言うのならゴダールを観たらいいんじゃないかと。『ゴダールの決別』は多分「映画はねむい」を自身の人生において初めて意識させた映画。ちょうどU-NEXTの見放題に入っていたので、あらすじだけ確認する。出かけていた夫が突然帰宅し、夫は自分が神だと名乗り妻を抱く。妻は彼が夫なのか神なのか苦悩する。どんな映画だったかさっぱり思い出せない。
4月某日、合間を縫ってダリオ・アルジェントの新作『ダーク・グラス』とベン・アフレックが監督と出演を兼ねた『Air エア』を観る。新宿武蔵野館は映画のディスプレイに力を入れていて、『ダーク・グラス』のビジュアルが幅3mくらいの壁一面にドーンと展開されている。中心には映画のキーとなる日食、そしてサングラス。サングラスといえば『ゼイリブ』。地球侵略を進める宇宙人の姿が見えるあのサングラス。ダークグラスは何も見えない。体臭のきついシリアルキラーの真の動機もまるで見えない。
ワイシャツの襟が黄ばんでいる。追加料金を払って黄ばみ落としをお願いしたけれども、ほとんど落ちていない。これはクレームの対象になるのかどうか。頑固な黄ばみだと負けを認めるしかないのか。黄ばみ落としのサービスを諦め、黄ばんだ襟のワイシャツを着続けている。
NIKEの社員だったら黄ばんだ襟のワイシャツでもかえって勲章のように見えるのかもしれない。『Air エア』でマット・デイモンが演じたエア・ジョーダンを生み出した男は、劇中ではワイシャツをほとんど着ていなかったのではないかと。主人公がワイシャツを着ていないビジネス映画は共感を得やすい、というようなデータはどこかにあるのだろうか?
『Air エア』は、エア・ジョーダンというメガヒット商品を生み出した舞台裏よりも、ドラマ的なところでいえば、息子マイケル・ジョーダンの才能を信じて、その才能を資本主義社会に売り込むことに成功した母親の愛とエージェントスキルが面白い。でもそれよりも、監督ベン・アフレックがエア・ジョーダンもマイケル・ジョーダンも80年代カルチャーも割りにサラッと流して、小気味よくストーリーを進めていく演出によっぽど面白さというか気持ちよさを覚える。
ここ一ヶ月ほどあまり映画を観ていないので、それこそがまさにねむっているということなのかもしれない。先に名前を出したので、久し振りに『ゴダールの決別』を観てみた。やはり寝た。中盤だったろうか、目が覚めるとジェラール・ドパルデューがいつのまにか神のように振る舞っていた。滑らかに横移動するカメラに次々フレームインする人物、カメラの動きを追いかけやがて追い越す船。光の射す場所、射さない場所すべてにニュートラルな光が満ちている。心地よくねむりに誘われる。
2つのドローイング展示が終わったので、GWは少しまとめて映画を観れるかもしれない。ところが映画を観ていない期間がしばらくあると、何を観たらよいかわからなくなってくる。先月だかに購入した『エマニエル夫人』の1から3をそういえばまだ観ていない。ここから始めるのがよいのだろうか?エマニエルが性に開眼し、性を伝導し、そして新たな性の旅路に就く。シリーズ3作を通じてエマニエルの成長を目の当たりにできる。連休の充電にはちょうどよいかもしれないなどと。