映画はねむい 2023年12月

  • 年末になるとその年を振り返って「年間映画ベスト」なるものをつくりたくなる一種のインフルエンザが流行するけれども、たいして本数観てる訳でもないのにまんまとその流行り風邪に罹ってしまう。10本も到底挙げられないので、まあ3本くらいかと振り返ってみる。ところが大抵の映画でうとうとしてるもんだから話をあんまり覚えてなく、なんとなく面白かった、そうでもなかったくらいの印象が残ってるくらい。話=ストーリーをあんまり覚えてないのはなにもうとうとしてることばかりが原因ではなく、そもそも話=ストーリーにあんまり興味がないからなのかもしれない。誰が何をしようとしてるのか、誰が何をしたいのか、筋があった方が作品の中に入っていきやすいのかもしれないけど、映画の面白さをそこに求めていないんだろう。順不同でもいいのだけれど、まずじゃあベスト3の3番目、南米チリ産のカルトコミューンを題材にした変態暗黒アニメーション『オオカミの家』(2018,クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ)。平面、立体を行き来するアナログなストップモーションアニメにこだわる執念(変態)と、実在したカルトコミューンの禍々しさ(暗黒)とが、グロテスクでありながら黒光りするファンタジーとして融合!独創的で素晴らしい!2番目、『悪い子バビー』(1993,ロルフ・デ・ヒーア)。30数年間地下室で母親と2人きりの軟禁生活を強いられた無垢なる魂を持った男が、外界(閉塞感漂う地方都市)へ出て人生を切り開く!これは先月の『映画はねむい』でも書いたか。俗に塗れるほどに人生は生き生きしてくる、といったところに惹かれるものがある。ベストの1番目は、『殺人捜査線』(1958,ドン・シーゲル)!菊川にあるミニシアターStrangerでのドン・シーゲル特集で鑑賞。娯楽作としての完成度の高さ!紛失したドラッグを血眼になって追う2人のギャングを主役に据えて、追う警察、巻き込まれた市民らが絡みテンポよいアクションとサスペンスが展開!ラストのカーチェイスも無駄がない!充実感しかない!変に後引かないとこも潔くてよい!これは眠くない!
  • 神保町にある美学校は1969年創立で、2023年度で通算55期を迎えている。54期目に初めて『生涯ドローイング講座』を受講して、2年目は根本敬先生の持つ『特殊漫画家-前衛の道』クラスを受講している。別に漫画家になりたい訳ではなく、特殊漫画家として唯一無二の道を40年以上切り開いてきた根本先生のアンダーグラウンドで生き抜く術の一端にでも触れられることができれば、という想い。そもそもこの講座自体が漫画家を養成することを目的としてないのだが。この講座の中間発表会
  • 受講している美学校『特殊漫画家-前衛の道』クラスで、中間発表会なる催しを12月16日(土)、17日(日)の二日間開催し作品を展示。受講生からの発案による有志のみ参加というスタイルで、根本敬先生はノータッチ。今回はドローイングピースをベタベタ貼り出すのでなく、授業の課題で制作したzineスタイルの作品を中心にダラーッと並べる。商品写真が一切ないストイックなデザインが秀逸な近所のスーパーのチラシを捨てられずに取っておいてるんだけれども、これをそのまま持ち込んで作品といっしょに並べていたら、これが一番お客さんの食いつきがよい。そういうものか。日々のゴミ(レシート、飴の包み紙、クリーニングのタグ、映画のチケットなど)と雑誌やチラシの切れ端をOPP袋に詰め込んだbagging collageなる作品を会場でライブ制作しようかと材料を持ち込んだら、期せずしてお客さんやクラスメイトも面白がって制作に加わり、「ワークショップやった方がいいですよ」なんて声もいただいたりして嬉しい反面そんな需要あるだろうかと。全体的には中間発表会の割りになかなか濃厚な、根本敬イズムも漂う展示になったんじゃないかと自画自賛。修了展は4月の予定。
  • 相変わらず映画館へ行けてないのだけども、年忘れ的に「これだけは観たい!」ということで、年末時間をつくって菊川のStrangerへ『ゲット・クレイジー』を、昨年に続き2年連続の映画館納めに。とは結局ならなかったのだけども、まずは『ゲット・クレイジー』。大晦日のロックイベント会場はトラブルの連続!癖あり大物ミュージシャン、劇場乗っ取りを企む輩、どこぞの未来からタイムスリップしてきたような謎のドラッグ売人とが入り乱れての大騒ぎ!同系統の音楽映画の名作『ブルース・ブラザース』以上に多幸感に満ちた年末に観るにはうってつけの映画!ラストの宴が終わった後の余韻もまた除夜の鐘を聴くようでしみじみ。これですっかり納めたつもりになったものの、大掃除をうっちゃって時間を捻出してさらに2本を年内駆け込み鑑賞。最近やたらと再評価?の声があがっているケリー・ライカート『ファースト・カウ』。銃の出てこない西部劇というのか、アメリカンドリームを夢見て敗れ去っていった者たちへのレクイエム的なお話し。神話のない国アメリカの神話のあり方。後からじわる。もう一本、カウリスマキのよもやの新作『枯れ葉』は、さえない中年男女の哀愁まみれのラブストーリー。酒とロックと犬がアクセントとなり、これぞカウリスマキ節全開のビターな味わい。どちらもうとうとする時間はあったけれども、それも含めて心地よい映画。
  • 新宿ビデオマーケット(以下ビデマ)の割引券の有効期限が切れてしまうのに気づき、年末自身への慰労も兼ねて円盤を買いに行く。輸入DVD、Blu-rayのディープな世界への憧れはありながらもその一端すらたいして知らないので、いつも棚の見方がよくわからない。いやもう少し正確に言うと、この棚の中から自分が興味ありそうなものをどう見つけてよいかがわからない。たいていビデマのおすすめを信頼して、Xであがってくるもの、HPに紹介されてるものの中から引っ掛かるものをメモっておいて、それを目当てにしている。ジャッロ、ユーロトラッシュ系やエロティックものに反応する。今回お目当ては、MICHAEL POLLKLESENER『FUCK THE DEVIL』(1990)と続編『FUCK THE DEVIL2』(1991)のカップリングBlu-ray!『死霊のはらわた』から多大なる影響を受けた工作感溢れるチープな自主制作ホラー!情熱と才能とが決して正比例しているわけではないという残酷な現実の一面を目の当たりにするのが好きなのだ。と言うと人が悪いか。でも、とにかく作らずにはいられない、出さなくてはいられないという衝動に素直な表現に心動かされる、というのも一方である。いや、それこそが見るに値するんじゃないかと。『2』で少しばかり演出力が向上しているように見えるのがまた微笑ましい。その他、ジャッロと呼ばれる作品群の中でもとりわけ不条理との評価が高い?『DELIRIUM』(1972)は前から観たかったので。廉価コーナーから3本チョイス。キャロル・ベイカー主演、ウンベルト・レンツィ監督のエロティックオカルト?『BABA YAGA』(1973)。メモだけはしてた作品かな。このコンビによる作品他にも何本かあるのね。『狂った蜜蜂』『甘く危険な女』『殺意の海』気になる。『ZETA ONE』(1969)、前に予告だけはYouTubeかなにかで観て気になってたキッチュでスカムなエロティックSF。『AU PAIR GIRLS』(1972)もなんか聞き覚えがあるタイトルだなエロそうだしということで。後で調べたら監督のヴァル・ゲストは『007/カジノ・ロワイヤル』(1967)にも監督として関わってたり。60〜70年代のエロくてトラッシーなやつがどうにも気になる。よい買い物。