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8月の更新が間に合わないのではと焦り始めている。先月1年5ヶ月ぶりに更新して「毎月更新できるよう頑張ります」と宣言してみたものの2ヶ月目にして早速飛ばしてしまいそうな気配が漂う。漂ってはいない。自らそういう気配をつくり出している。勝手に部屋の隅の暗がりに幽霊を見ているように。いやそんな霊感はない。気配も気のせいとやり過ごせないものか。で今回は6月から7月にかけて観た映画のことをうとうとと書いてみる。
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春先からにわかにホラー、サスペンス系のジャンル映画が充実というのか、個人的に琴線に触れるような映画の公開が続いて、『異端者の家』、『サブスタンス』、『ノスフェラトゥ』、『MaXXXineマキシーン』、『28年後』、『罪人たち』に、リバイバルでアレクサンドル・アジャの『ハイテンション』も。スマホのメモアプリに「行きたいやつ」という名前のメモをつくっていて、映画や美術展など行きたいイベントを備忘録的に打ち込んでいる。そこにこれらのタイトルだけ打ち込んでおいた。そんなにホラー、サスペンス系のジャンル映画が好きだったろうか?という疑問も浮かんだりする。たまたま面白そうだな、と思ったのがここ最近はホラー、サスペンス系のジャンル映画に固まっていただけなんだろう。この手のジャンルは当たり前だけど「怖がらせる」「ドキドキさせる」ということに特化していて、それをエクストリームに極めようとすればするほどもはや怖いのかなんなのか、コメディに近づくところに面白さを感じる。『サブスタンス』なんてまさにそうだった。美や若さに執着した果てに、分裂した主人公同士が取っ組み合いを始めるなんて。おかしく、同時にまた物哀しい。よいコメディは、おかしみと哀しみとを併せ持つ。ホラーの話がコメディにすり替わる。『サブスタンス』は先月も触れた。
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『MaXXXineマキシーン』を映画館で観た。事前にシリーズの1作目『X』と2作目『PEARL』とを復習して臨む。あまりそうした勉強的な行為はしないのだが。『PEARL』は初見。単調な田舎暮らしに絶望している主人公のパールがミュージカルスターを夢見るが、事は思うように運ばず、邪魔立てする周囲の人たちを1人また1人と殺していく。話がわかりやすく、主演ミア・ゴスの存在感もあって、素直に面白い。舞台となる時代が1920年代で、映写技師の男がパールに、世界初と言われるポルノムービー(ブルーフィルム)を見せるシーンにグッときた。グラフィックデザイナーでありファッション史家の長澤均氏が不定期に開催するイベント「ポルノムービー・エステティカ」で、この世界初と言われるブルーフィルムを観たことがあったので、ポルノの歴史も学んでおくとこういう時に得した気分になる。本筋とはあまり関係ないが。『PEARL』を観た後に『X』を、こちらは再見。初見時は、70年代の雰囲気をうまく出した小粒なスラッシャー映画、くらいの感想だったけど、『PEARL』を観た後だと、干からびた老婆のパールが年老いてもなお夢見る少女であり、いまだに性的に飢えているところの味わいが深まる。彼女の枯れない性的欲望の起源には、あの世界初と言われるブルーフィルムの存在があるのかもしれない。ちなみにこのブルーフィルムは『A Free Ride』というタイトルで、諸説あるようだけど1915年〜1920年代初頭に制作されたらしい。町外れの道端に立っている娼婦に男が声を掛け、そのまま野外でコトをいたす内容。牧歌的な男の妄想。でようやく『MaXXXineマキシーン』、舞台は1980年代のハリウッド。『X』の主人公マキシーンが、ハリウッドスターを夢見てオーディション通いを続ける中、彼女の周囲で連続殺人事件が発生する。マキシーンのスター街道は、果たして『PEARL』の主人公パールのそれが潰えたのと同じ轍を踏むのか?みたいなサスペンスを持たせつつ、でもそういう流れにはならなかったかな。マキシーンの周囲でいろいろ不穏なことが起こるのだけど、決定的に彼女の行く道に影響を与えるでもなく、彼女は飄々と世渡りしていく。その辺が日本のいまの空気感で言うと「令和っぽい」のかと。関係ないか。
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6月6日にUFOは見なかったけれど、「フレンチホラーオールナイト」を観に行く。『ハイテンション』、『屋敷女』、『ゴーストランドの惨劇』の3本立て。ホラージャンル不毛の地であるフランスに、2000年代突如として勃興したハードなゴア描写を伴ったホラー作品群、その筆頭がアレクサンドル・アジャ監督の『ハイテンション』(2003)であることは、ホラー映画史的には多分常識になっている。呼応するようにジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロのコンビ監督による『屋敷女』(2007)、パスカル・ロジェ監督『マーターズ』(2007)などが続いて「ニューウェーブ・オブ・フレンチホラー」などと言われたり。この辺りのことは、小林真里監督のフレンチホラーを追ったドキュメンタリー『BEYOND BLOOD』に詳しい。オールナイトに臨むにあたって一応鑑賞。あまりそうした勉強的な行為はしないのだが。フランスでホラーを撮っている監督は皆どこか哲学者の風情があるなと。今回のオールナイトでは、パスカル・ロジェ作品は『マーターズ』ではなく、2018年の『ゴーストランドの惨劇』がラインナップに組まれていて、個人的には未見の『マーターズ』を観たかった。オールナイトで同じ椅子に7〜8時間も座り続けるのはなかなかきついし、そもそも90〜120分の映画だって必ずうとうとする時間があるのに3本立てなんて。1本は落としてしまうくらいの腹づもりで参加。それでも『屋敷女』は初見だったので、こればかりは頑張るかと。驚いたことに上映前のトークショーからすでにうとうと。気を取り直して1本目は『ハイテンション』。日本公開当時に映画館では観てないが、その後レンタルで観てるはず。衣装箪笥で頭をもぎ落とすシーンがハイライトと思っていたら、案外初っ端でそのシーンが訪れ、記憶はあてにならない。オチもすっかり忘れていて、殺人鬼の正体が顕わになると「いくらなんでもそれは無理がないか」と、きっと初見の時も同じ感想を持ってるはずだろうけど、新鮮に楽しむことができた。2本目は『屋敷女』、とにかくベアトリス・ダルの異形の佇まいが恐ろしい。この映画の彼女のせいで、すきっ歯の女性はいわれなき偏見を持たれそうなくらい強烈。たった一晩の、一軒の家の中で進行するシチュエーションホラーで、ずっといやな感じが続く、息苦しい。3本目『ゴーストランドの惨劇』は過去に映画館で観ているので再見。夜明け前に観るにはなんともぴったりな、なかなか絶望させる作品。突如暴漢に襲われ家に監禁された姉妹が、サバイブしたと思ったら実はまだ監禁されてましたという突き落としが衝撃。今回のオールナイトの3本の中では一番いやな感じでよかった。完全に寝落ちすることもなくオールナイトを乗り切り、5時過ぎに夜明けの池袋サンシャイン通りに出て、悪夢の一夜を生き延びた感じがしたようなしないような。
- 7月に観た映画のことまでたどり着かなかったけど、今月はこの辺りで終わる。1930年代アメリカ南部を舞台にしたヴァンパイア+ブルースの『罪人たち』とか、6月末にBlu-rayがリリースされたケン・ラッセルのキワモノ修道女映画『肉体の悪魔』とかは、来月触れられれば。忘れてしまっている可能性は大。
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